月 の 雫
鵜飼千代子
お月さま取ってきてよ
些細なことでボタンを掛け違えて
へそを曲げてしまった私に
ちょっと待ってろよ
今、長いハシゴ作っているから
そんな我儘を言ったことも
すっかり忘れてしまった頃
頼まれもの取ってきたよ
握ったこぶしを差し出した
きょとんとしている私の手のひらに
まろい光を放つ透明な球状の
ほど良い重み
月の雫を取ってきたよ
約束なんて守られないものなのよ
と泣いた私に
約束は守るためにあるんだと言った
あなた
泣きじゃくる私をしっかり抱き留めて
俺があなたを守るから
温かな胸のぬくもりに
月の光に抱かれる
(
いだかれる
)
ような安心感
そう ここが私の帰る場所
初出 NIFTY SERVE FCVERSE 1997.5.7
改訂版「月の雫」 FCVERSE ビデオ詩誌
「詩覧ぷり」創刊号(1997年秋号) 収録
改稿版「月の雫」 詩集 ブルーウォーター 所収
自由詩
月 の 雫
Copyright
鵜飼千代子
2010-03-28 09:44:32