胡桃
クローバー

木立には
そう、夕闇がたっている
じっとして
僕じゃないものが
僕よりも、もっと素晴らしい中身が。

小さく膝を抱えるのは、
積もりつもった、
過去視の、少年
くくるるどどう
小声で鳴いている
行儀良く
小さな銃剣を構えている
いくつかの胡桃
を砕いた人形
小さく
強く
そして、ロシア製の彼は
砕くばかりで、
味を知らない


同じ形の
ものを食べれば
治癒する
という、過去の、治療

胡桃は、なにに効く


背後にたっている
夕闇が
じっと見つめ返している
のは僕ではない
僕の背後の
僕だった少年、
僕だった中身、
僕だった胡桃、
そいつの口は、
ロシア製のあいつみたいに
体の半分ほど開いていた

もう一粒の胡桃を砕くと
咀嚼しはじめる
良かったな、食べられて。

うなずくと
バランスを崩して
前のめりに転ぶ


脳だよ
脳?
胡桃の中身は
脳の形さ。
思い出の形も、
脳の形さ。


くしゃみがでた。

治療が済んで修復されたら
背中を丸めて一緒に帰ろう。


自由詩 胡桃 Copyright クローバー 2010-03-03 22:35:35
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