交錯詩(重奏詩)「星欄干 — あなたと私」祐緋&まどろむ海月
まどろむ海月

          奇数行 祐緋
          偶数行 まどろむ海月





おやゆびとこゆびほどの 何気ない距離に
 あなたと 私
うずくまる ガラス玉のメールは
 自分のなかの可能性を 想像し
ふりかえらない後姿に砕け散る
 てみれば きっと

空を泳ぐ茜雲になるというあなたに
 同じところばかり すべて
海を這う漁り火になるといい
 他者は違う日の自分の姿 それでも
ふたつの行く先の ひとつをえらべずに

 この感覚は私だけのもの この身の痛みも

足の先から産道を潜り抜けてきたわたしは
 自分の小ささが嫌で
何年生きてきても 四角い地球に馴染めずに
 すべてを否定したくなった日
漠然とした宇宙をうまく歩けない

 私は海辺に出て
くすんだ欠片は完熟した林檎の実のように
 一つ 一つ 貝殻を見つけるように
咲き乱れた桜の花火のように闇に滲みだす
 自分の感覚を 拾い集めた

いちばん暗い襞(ひだ)に墜ちてゆく
 空の青さ
いちばん綺麗にかがやくため
 海の匂い

水平線のように地平線のように ひび割れた
 潮騒の響き 風の感触
ビードロの天の河 渉(わた)れば血まみれになる裸足
 さざ波が洗う 星屑をなめれば 辛く
あなたのためなら死んでもいい だけどあなたを
 それらは すべて
殺(あや)めて罪人(つみびと)になるのは 砂を吐いた貝殻なの

 比較できない
彦星と織姫をへだてる半熟の傷口に 破片
 自分だけのもの
の水が沁みこんで 誰も足を踏み込めない
 この胸の痛みさえも

凍てついた夜の底に沈んでいた
 愛おしんで
星欄干が時空の針を折り曲げていた
 生きようと 思う





                   







自由詩 交錯詩(重奏詩)「星欄干 — あなたと私」祐緋&まどろむ海月 Copyright まどろむ海月 2010-02-21 01:00:22
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