slow
宮野


うしろ向きに歩く
温い風が背中にささって
微妙な痛みを感じている


 「すべての季節がおわったらあいに来てください」と
 そう言ってきえていったきみ

はじまりを忘れてしまったから
もうあいにはゆけないよと
伝える術もないから
どうしようもなくて
でも立ち止まる勇気すらないから
とりあえず歩く

曖昧な感情

冷えた空気と熱をもった光、
夜があけたばかりでは
のろのろと起動するだけで
安心という世界はすぐにできない

・行進する両足
・呼吸をするからだ
・白黒映画みたいな脳内
・うしろに流れる視界


一定の周期でおとずれる変化を
目を伏せて知らんふりをして
見逃してしまうおろかさに
ただ溜息をつく


おわりに近づいてゆく
そのことにはきづいている
なだらかに下り坂はつづき
ゆるやかに失速する



自由詩 slow Copyright 宮野 2010-02-10 00:56:37
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