おひさま病
みい
とうといのです
ぽかぽか日和だねえ、と
ぱたんぱたんと洗濯物を干し
ついでによいしょ と
お布団をはこぶ
あのとき
わたしにお布団は大きすぎたのです
お母さんの大きな手で
運ばれているお布団の
両方のはじっこ
両手いっぱいにつかんで
確信しました
わたしもきっとお母さんになる
ぶらあん と
わたしごと運ばれたくせに
とうといのです
おひさまに干されたお布団が
とても気持ちが良いこと
あったかいにおいが
わたしの中でいつまでも
きらきらとしていて
夕飯の時間になっても
わすれられなくて
ひゃあひゃあ と
なんにでもわらっていたのです
あのとき
虹彩がおひさまを
たしかに一生 とらえているつもりでした
けれども
あやまって
膏肓に
入りこんでしまって もう
治る見込みがないのです
わたしがお風呂から上がり
顔をうずめたバスタオルは
汚物の匂いがしました
かすかに
やはりあのぽかぽかの匂いが
同時に鼻をかすめましたが
どうせそれだって
同じ匂いに変わってしまうのです
「どうしようもない子だね」と、言う
お父さんの口癖を
今、聞くことが
できたら
おひさまの日
わたしはまた
ひゃあひゃあ と
なんでもないようにわらって
ほんとうになんでもなくなりました
炎天下という文字のなかに
はやくとけてしまいますように
ふと
思いついたことが
また膏肓にしみて
馬鹿みたいに重たくなります
自由詩
おひさま病
Copyright
みい
2004-09-26 19:44:21