日時計
水町綜助

だれ と呼ばれる人が
(木立のあいだ
(ほほにその影を落として
だれ と僕を
(眉をひそめて
(訝しんでいる
僕 は、じっ」と日時計のような
緑の落とす影が
うごいてゆくことを
目にとめることができない
斜めにかしいで
反転した灯台の光線と、
夜のようだ

気温は 高く
だれ と僕がいうあなたは
僕 と名乗り
だれ と呼ばれる僕は
あなた だという
あなた は僕を
あなた と呼ばない
あなた は僕だといい
僕 はあなたをそう呼ぶ

じりじりと
光は温度を高めることをやめない

(樹のかたちは
(針葉樹の針先に終わる
(灯台の転回でそれは間延びして
あなた をいちめん引っ掻いていく
切っさきにまつわる
あなた の残滓は
時間の回転に倣って
僕 まで弧をえがくだろう
あなた が僕を心配したとして
一体どのような言葉を
だれ に向かって告げるのか

ぐるりと
木立の影はまわるので
どうにか
瞬きでもしないことには
円の中にすりこまれてしまいそうだ


自由詩 日時計 Copyright 水町綜助 2010-01-01 13:56:54
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