わたしが消化していく筈の明日は
あぐり

翠の眼をした少女が
ふぅわり ふぅわり

信号待ちの交差点で空を昇っていくのをみた
だからたぶん、明日は雨が降るに違いないのだ
今は心が浮き立つような白けた曇り空から
じぃっ

一粒の吐息が漏れ落ちてくることを信じている
赤から青に変わるそのことよりもきっと(絶対)確信に満ちた暗示

人混みに慣れていったわたしの本能は
もう麻痺してしまっているのだろうか
あんなにも吐き気が込み上げていた日
わたしの胃袋は大量の笑い声を含んだ

雑踏というのはある種の安心感をもたらしているのだと聞いた
宗教とは文化的現象だと先生が言っていた
(生き続ける意味をください)
全ての苦悩に答えを与えるのは教えではないけれども
尽きることのない欲求に対応できるのが宗教なのだそうだ
信じていることを前提に成り立つ
わたしたちはこのシステムになんの疑問を持たない
(でもわたし、黄色の点滅はいったいどういうことをわたしに求めているのかわからないままなんです)
反発したって批判したって
あなたたちはここでいきているじゃないか
どうせ信じているくせに。

*

脱ぎ捨てていくのは排気ガスの残り香だったけど
「かえってきた」場所のにおいにまた包まれていく(縛られていく?)
ねぇ
今日の信号も正しかったの
何一つ世界は狂っちゃいなかったわ
ふぅわり ふぅわり
口ずさんでみる
ふぅわり ふぅわり
そうして迎える筈の明日を目前にして
隣で眠るあなたたちにわたしが今日いきたことを伝えたいのに話したいのに
何処までも完全な呼吸を繰り返しているのだ、もう、既に
ねぇ
いったいいつくすりをあなたたちはわたしのめをぬすんでのんだのですか
どうしてそんなにもきょうをそぎおとしてあしたをしんじていられるのですか

わたしが消化していく筈の明日は
たぶん雨が降るということだけしか
わたしは信じていないのに





自由詩 わたしが消化していく筈の明日は Copyright あぐり 2009-10-04 11:20:02
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