まっさらなほどの欠如を
あぐり

おかあさんがわたしをうんだので
わたしはおねえちゃんをうんで
おねえちゃんがまっさらなわたしをうんだらいいな
単細胞生物みたいに生きられるわたしを
おねえちゃんにうんでほしいんだ

わたしはおねえちゃんを慎重にうむから
ちゃんとしたわたしをうんでくれるように(単細胞生物みたいに)
おねえちゃんのかかとからうまれたいの
少し固くなったかかとからかかとからかかとからかかとから
(グレーな目を見開いて/指をしなやかに動かしながら)

完全なる欠如を身体に欲しいよ

埋める穴なんていらないし
指摘するだけの杖もいらないし
なにもかもが平らな世界で
分裂だけを繰り返していられるのが
どうにも幸せなんだって
わたしは不完全な欠如を抱えて学んだりした

おかあさんがわたしをうんでくれて
ちゃんとそだててくれて
ちゃんといきられるようにあいせるように
そううんでくれて
でも
わたし
なんでかな
正しい不完全さが欲しくなるよ
わたしのあいなんて
とても複雑な役に立たない方程式みたいで
誰にも解けないことだけで成り立っている

おねえちゃん、
うんでほしいよわたしを
このままじゃ
正しくないの
単細胞生物みたいに
分裂だけを繰り返して
そのためだけにあいせるわたしを
うんでほしいの
おねえちゃん。





自由詩 まっさらなほどの欠如を Copyright あぐり 2009-09-11 21:52:09
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