こうとうなことば
あぐり

唇に触れ
歯を撫で
咽を滑り
丁寧に体の線を通る水の清らかさより哀しく
わたしの隙間を見せつける夜の光に
世界中そこかしこ全てへと
わたしの居場所を散りばめたく(囁き教えたく)なる衝動ひとつ

冷蔵庫には真っ青になったあきらめ/さみしさばかりがあり
躊躇うのだ、蓋を開けるその瞬間
冬が凍らせてしまえばと
高すぎる手の温もりを洗い流しながら
所詮
安直な気温の変化にしか頼れないのです

かたかた と
震え出すのは指であり
賞味期限のある感性をわたしは切り売りすることを好む
目を疲れさせる為に画面を暗闇で見つめている、
それは病気ではないよ
唸り続ける冷蔵庫の中身はもう見たくないみたくないのだみたくない
言え
書き連ね 叫べよ
さみしい さみしい
あいしてるなんかよりもそれはずっとずぅっとこうとうでむずかしいことばだよ。




自由詩 こうとうなことば Copyright あぐり 2009-09-09 23:15:36
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