オウタム
マッドビースト


 夏に捨てられた蝶が
 ひらひらと自転車の前輪に身を投げようとしている

 これ以上ペダルを重くしないでおくれ と
 黄色いはねをかわす

 崩れそうな空
 地響き
 空鳴り
 あれは巨大なギアーの噛みあう音
 秋が雲をつれてやって来る音


 次の朝 ひんやりとした道に
 ばらばらの蝶のかけらが散っている悲しみ

 蝶は場所を求め
 雲に覆われた秋の機関部を探し当て
 夏を終わらすまいとした
 秋の行軍は
 しかし止まるはずはない確かさ

 季節を追う強い翼をもたぬ蝶の悲しみ

 地響き
 空鳴り
 あれは巨大なギアーの噛みあう音
 
 夏に捨てられた僕に
 秋の来る悲しみ
 
 季節を越えるからだあるものの悲しみ




自由詩 オウタム Copyright マッドビースト 2003-09-30 01:30:33
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