ナニカ ☆
atsuchan69

ナニカは知らない、
燃える秋の山々はもくもくと煙立ち
はるか上空から
ふりそそぐ焼夷弾によって
木や草も畑も焼けた

森は焔につつまれ
必死に逃げる動物たちを
獰猛な火の手が執拗に追ったけど
翠玉の瞳に大粒の涙をためて
ナニカは何も知らない

歓びのないナニカ、
長い髪を風になびかせ
この古い世界が朽ちてゆくのを
ただ見ることもなしに眺めて

ナニカは知らない、
哀れな人間たちの苦しみ足掻くさま
彼処で聴こえる泣き叫ぶ声を
何も何も そして感じない

ナニカは知らない、
それら悲しみのすべて

棘と棘にその身を傷つけてさえ
笑みし、歌う そよ風の
涙のまじったそよ風の、
散らす花びらの色やかたち

錆びた線路がいつしか途切れ
キャラキャラと紅い葉の降りしきる
やがて朽ちてゆく
夕日の丘の家々を後に

ナニカは知らない

ナニカは知らない
何も何も そして感じない












自由詩 ナニカ ☆ Copyright atsuchan69 2009-08-30 01:26:28
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