手紙
松本 涼

暦を焦がすようにして
君を忘れていきます

久しぶりに私の想像するところ
君は今でも顔の前で手のひらを上に広げて
風を乗せたり散らしたり
不明瞭な気配を集めたりして
今日を楽しんでいるのでしょう


穏やかな街に越しました
辺りはそれぞれに静かです

夕暮れの色が変わりました
昔にも見なかった色です


あちらへこちらへと
矢印の先を動かしたりもしてみます
それでも軸はびくともしないで
人というのは頑固なものだなあと思います


私の部屋では今
小さな植物が育っています

いくつかの鉢が枯れた後でも
生き残った綺麗な緑です

機会があれば
その葉を想像してみて下さい


それではまた
一緒に坂を登れたらいつか


それから
久しぶりに
というのは嘘です




自由詩 手紙 Copyright 松本 涼 2009-07-27 22:53:15
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