夏に至る
塔野夏子

夢が 微睡んでいる
緑の葉陰ものうく揺れる
やわらかな午後を

その瞼を 胸もとを つまさきを
うすい風が吹きすぎる

夢は そうして 自らを
夢みている あえかに甘やかに
その夢の水面みなもには うっとりと睡蓮が咲いている

夢よ せつないか 自らが夢であることが
こうして微睡みながら
自らに漂うことが

夢の口もとが かすかに微笑む
うすい風がまた吹きすぎる

水面に睡蓮は ただしずかに咲いている
緑の葉陰を肌に映し
夢は微睡んだまま 夏に至る





自由詩 夏に至る Copyright 塔野夏子 2009-06-19 18:10:53
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