アルカロイド・ショック
虹村 凌

自分を自分で部屋に閉じこめたまま世界を変えようとするなんて
あまりにも馬鹿馬鹿しいじゃないか
一緒に歌うテロリストになって
学校のトイレを塗装しにいこう
天井と壁と床を真っ黒に
便器をショッキングピンクに塗って

そうしたら俺の脳味噌にオロナイン軟膏を塗り込めて

太陽の下で闘う事に意味は無い
人生などにたいした価値は無いと知った時から
ずっと興味が失せたままで
他人の生活を困難にする事が唯一の機能なら
もういっそ

人が「狂う」と言う贅沢を許すのは
そういった立場にある時
でも多くの人々は狂ったまま
普通の人のフリを
潔白さと普通さと装って
自殺を言うスキャンダラスな道を選ばないまま
もう

中学生が聞くんだ
普通って何ですか?って
現実って何ですか?って
大多数の人がそうであると思いたい
最高でも論理的でも適切でもない
社会全体の欲望に適合するようになったものがそうだと答えると
不満そうに煙草に火をつけて
本当の問題を隠す為に色々考えてるんだねと
まるでルールを決めて罰を発明する為に
それを破る方法を教えるカミサマみたいだと
笑う
生きたいのは(殺したいのは)自分の方だった

繰り返す同じテーマの物語
もっと話すべき事はあるのに
君の吸う煙草の中のヴィトリオールとか
君の吐く煙の中のリビドーとか
世界の裏側で腹を空かせて娼婦になる悲劇的な子供とか
同じ地平線で囲まれた街で高級娼婦を目指す大学生とか
俺が死んでも俺を恋しいと思わないから俺が愛せる女とか
誰もが何事に対しても自分の理論を持って
自分の真実だけが大切だと信じている
間違いじゃないし悪い事じゃない

脳味噌にオロナイン軟膏を塗り込めてくれ
肺にヴィックスを塗り込めてくれ

シャカイは常に集合的な行動を教養するし人はそれを受け入れる
ただ無理をし続けると人はあっけなく壊れるし死ぬ
壊れて行く美しさは格別のドラマだ
壊れて行自分を知りながら俺を愛さない眠る人の為に
その傍にいると言う愛は大きな可能性だが
同時に果てしない絶望でもある
君はどっちに賭けるかね?とドクターは

私の最も卑しい部分を見ても尚優しく扱う俺を愛するのは不可能だ
と君は笑って言う

最も下品で最も純粋に世界を壊して遊び回りたい
処女と娼婦
奴隷ご王様
それぞれの快楽を見て回って
笑う
生きたいのは(死にたいのは)自分の方だった
俺が死んでも俺を恋しく思わないからこそ俺は君を愛している
シニカルに笑うコップの中の俺は
アルカロイドショックから目覚めて久しく
今日中に起こるスキャンダラスでデカダンな話をずっと待っている
誰もいない部屋に自分だけで


自由詩 アルカロイド・ショック Copyright 虹村 凌 2009-04-12 11:47:18
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