例えばこの手の中に拳銃が
虹村 凌

例えばこの手の中に拳銃があるとする
リボルバーの中には1発の弾丸が込められているとする
そうしたらその拳銃を
一体何に突きつけたいのだろう

前から一撃が欲しかった
総ての苛々とか悶々とかそういうのを全部
どっかに吹き飛ばせるような
形勢を一気に逆転出来るような
気に喰わないものを振り払うような
一撃が欲しいと思ってた

例えばこの手の中に拳銃があるとする
リボルバーの中には1発の弾丸が込められているとする
その一発の弾丸は
一撃と呼ぶにはあまりにも小さく貧弱だけど
俺にとっては間違いなく一撃で

前から一撃が欲しかった
でもその一撃をどこに向けるのだろう
その一発をその一撃を
後生大事に抱えたまま何処に向かうと言うのだ

繰り返し繰り返しエア拳銃自殺
繰り返し繰り返しエア拳銃自殺
繰り返し繰り返しエア拳銃自殺
繰り返し繰り返し
それでもその一発は自分には向けない
それでもその一撃は他人には向けない

例えばこの手の中に拳銃があるとする
リボルバーの中には一発の弾丸が込められているとする
例えば目の前に死ぬ程に憎い奴がいるとする
部屋には二人しかいないとする

別に社会に風穴開けるとか転覆させるとか
そういう大きい事を言いたい訳でもないし狙ってもいない

ハローハロー聞こえているかい
ハローハロー聞こえているかい
ハローハロー聞こえているかい
ハローハロー
ハローハロー

例えばこの手の中に拳銃があるとする
リボルバーの中には一発の弾丸が込められているとする
劇鉄は起こされていて指は引き金にかかっているとする
銃口はコメカミより確実に死ねる口の中に入っているとする
それでも死ぬ事は無い
エア拳銃自殺を繰り返しても
どれだけ一撃を欲しても

外は春の雨が降って
僕は部屋で独りぼっち


自由詩 例えばこの手の中に拳銃が Copyright 虹村 凌 2009-04-04 13:41:15
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