春宵
nonya


人当たりの良い夜風に浮かれて
ゆうらり裏道をそぞろ歩く
コンクリートの余白から湧き上がる
若すぎる命のにおいに
甘い吐き気をもよおしながらも
どこにも辿り着けない足取りで
高層ビルを迂回する

人の宴が終わった公園のブランコには
逃げ遅れた花弁が一枚
人でないものの密やかな喘ぎ声が
湿り気を帯びた闇を満たして
酸っぱい眩暈をおぼえながらも
誰にも辿り着けない眼差しで
朧な月を見上げる

何度も曲がり損ねた曲がり角を
性懲りもなく曲がり損ねているうちに
いつの間にか寄り添ってきた
可愛い君の肩を抱えながら
いよいよ宵に酔いつぶれて
僕は見え透いた迷路の
あからさまな出口を見落とす

分かっているよ
朝が来ればきっと痛いんだ
でも もう少しだけ
君の背中に見え隠れする白い尻尾に
気づかぬふりをさせてくれ



自由詩 春宵 Copyright nonya 2009-04-11 11:06:28
notebook Home 戻る  過去 未来