ねこせん
山田せばすちゃん

それは子猫にしては無理のない話で
信号を見ることも横断歩道を渡ることも
所詮はできはしない相談だったかもしれない
ただその軽やかな身のこなしで
何度かは成功してきた国道の横断
今朝はほんのちょっとした躊躇が命取りになって
子猫は砂利を満載にしたトラックに轢かれてしまった

その軽やかな身のこなしを掌った脳髄ごと
可憐な頭蓋骨はくしゃっと砕け
か細い肋骨は肺ごとぽきぽきとつぶれてしまった
動かなくなった子猫の上を
避けようもなく宅急便のトラックが通る
あるかなきかの内臓を道路にはみださせて
通勤途中の乗用車が踏みにじる
尻尾の先から背中まで地面に埋め込むかのように
保育園児で満員のバスがゆっくりと押しつぶしにかかる
そのとき最後に子猫の体から一筋の魂が立ち上るのを
保育園バスの後ろから来たホンダカブのおじいさんが
見たような、見なかったような

残った血の跡が埃にまみれて消えかかるころ
そこにはとらじまのねこのせんべい
もう三味線にもできないくらいにぼろぼろになって
電柱に止まったカラスも見向きもしなくなった
ねこせんが一枚


自由詩 ねこせん Copyright 山田せばすちゃん 2009-04-04 22:54:04縦
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