アラベスク
みい

なにもできない夜でした
膨大な量、足りなくなって 急に
大きく。大きく、吸い込むのです
膨張する一方で 血管に指先からの、キス
ぶうわ、からだ中をめぐる網 ひとえに
とじこめられるわたし、が
つもる一方で
なにも、できない夜でした
いよいよだわ、生きている。
なんで、飲み干せると思ってたんだろう


月を
さがしていたのです
少しも はみだしていたく、
なかったの それは
わたしの範囲
あの
ぶうわ、と めぐる血液のなか
心地いい かみさまがくれた
おんな、という わたし の
あの あなたのキスで
とじこめられるくらい
少し
きゅうくつ、なぐらい
欠けていたり、満ちたり、
ぼんやりと
してたかった



わたしは泣くたんび、顔が変わり
まぶた、はれ、ぐにゃり、
形成されるあいだも
あなたの だんだんと一人前になってゆく顔が
わたしはひどく 怖かった
わたしの少し、するどくなった顔を
あなたは少し、
きらった

アラベスク
それがたとえ、月並みでも
祈ったのです

たしかに、
わたしも あなたも それぞれ
飲み干せる
ように

わたしの指 ひどく走って
鍵盤からもれる、膨大な呼吸を
わたしは
汲んで、
まぶた、はれ、ぐにゃり
いつのまに
月も
みえないの

人さし指の音が
どろん と
聞こえる

アラベスク









自由詩 アラベスク Copyright みい 2004-08-21 20:58:38
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