花離手
木立 悟






はね橋が分かれ
呼吸が分かれる
緑は
重くなる


雨 行方 雨
行方 雨
窓のかたちの光が吹いて
窓のかたちの空に重なる


着いたはずのしずくは離れ
音に遅れる光を吸う
林の上の低い曇
ただ息だけを映す水


一瞬の影 一瞬の波
頭をもたげる水の蛇
けものみちに重なる血流
いのち持つ色 ひとり昇る色


化粧のなかのさみしい光
一歩一歩沈む道
鳥は舟をほどき終え
新たな時計の巣を作る


駆ける思いを断たれた息を
つなぐように差し入れられる手
溶けてはひらき むすび ひらき
忘れられてもかがやいてゆく


片目に傾く夜のそのまま
灰 狐 蜂 散形花序
声の洞の声の洞
到かぬと知りながら呼びつづける


冬の終わりに咲く冬へ
ついばむ鳥の陽がそそぐ
羽の跡また羽の跡
金より重い緑を吸う























自由詩 花離手 Copyright 木立 悟 2009-03-08 14:56:48
notebook Home 戻る  過去 未来