アンティーク、アンティーク
れつら


年をとる、っていうことが、
リアルに想像できない

ランプの光がゆるい喫茶店で
丸太造りの壁にもたれかかってて
木の息遣いを感じる、と
あなたは言った

色艶はニスで光って
皮膚呼吸を止められている
もう二度と蘇ることがないよう
美しく殺されたまま

わたしたちは店を出て
川べりの道を歩いた
街路は手足を時折もがれながら
それでも伸びかけている木々に覆われていて

時々こうやって、枝を落としてやらないと
美しい花を咲かせることはできないのだ

その口ぶりが得意げに聞こえて
なんとなく彼を許すことができない

生きている間にしか
生きているものには会えない
死んだことはないからわからないけどね
きっとそう、
わたしは頷いた
でもそれはきっと、死んだものでも同じこと

その木に触れるのが躊躇われて
わたしは今
うまく息をつげないでいる




自由詩 アンティーク、アンティーク Copyright れつら 2009-02-27 21:12:41
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