祝辞
れつら

たくさん
たくさんたくさん
たくさんたくさんたくさんたくさんたくさんたくさんたくさんたくさんたくさん
の、はな

*

汚れた雑巾で机を拭きながら
それでも掃除をしてるつもりなのだ
滴り落ちる泥水は目から
見つめるとぼやけて乱視だから
霞んだ水流の強さに負けて
目を擦って煙草をふかす
休憩しよ、ね、きゅうけい
また空が磨れていく

**

どれだけ愛したにせよ
どれだけ愛されたにせよ
そんなことは胸のうち
下着以下、裸未満で抱き合い
たくさん言葉を交わした
裸婦のスケッチみたいに手触り
木炭は削れ落ちて指の上

***

春の色、っつってピンクって安直
寒色じゃなく、でも肌寒い夜は黒
浮かぶのは宇宙、真空
ってことは距離がないってこと?
違います
それは全然ちがいます

****

こめかみにまで心臓があるから
触れると赤かった頬は冷えてしまって
指の付け根で断ち切れた選択肢
ごほん、じっぽん、にじっぽん
なんだかたくさん選んでるみたいだけど、そうだよ、たくさん
そしてその隙間に空
たとえば花びら
ずいぶん時間がかかったなぁ、綺麗になるまで
睫毛の輝きは涙のせい
無限に無碍に別れよ手と手のつながり
ふたりならじっぽん、にじっぽん、よんじっぽん

*****

せーの、で
さよなら
できなかったのは
なんでかね?
顔のひだりがわは笑い事に怯えて
みぎがわは悲しみにくすぐられてる
はなはどっちに行ったら良いかわからずぴくぴく
口ではあうあう
舌が唾液にまみれてひとりでフレンチキスするみたいに
霞を食ってまた何事か呟く

それにしてもいまだ
からっぽの体内転がしながら
明日には発つって不思議ね
夜でも、夜じゃなくても
光が跳ね返って目が痛い
目だけじゃなくからだじゅう痛い
それよりいちばん遠くで
なにより輝く星が痛いよ

******

一応、想定してた未来では
僕はあなたを置き去りにして行く予定で
その残酷さに泣いたことも幾度も

けれども実際はといえば
どこへ旅立っても、置いてけぼりを食うのは僕
なるべく遠くにいこう
でももうあきらめた
ここから宇宙の果てですから、とかなんとか
呟きながら中指で窓を開けて
薬指は水滴まみれ
ほかの指は?
あいかわらずふらふら、よかった
指輪をしてたのは一本だけだった


*******

明日も
無事に心臓が動いているなら
ひどいって思う
リアルタイムに道端の草いきれが伸び行くのとか見えまくり
なんていうか超ポジティブ!
マジあがるーとか言いながらその葉っぱ吸ってるひと
脳は鈍化
煮こごった血流で単語三つくらいしか出ない
まじはんぱねー
はんぱねーよ
はんぱねーなんなんだよ
おれ
おれから抜けろ、おれのいちばん大事なアレとか
連れてってよ
あげるよ心臓
いらんから、マジで

*******

いつでも
何度でもはじめられるってことは
いつも
ずっと終わってるってこと

ぁたしすっごぃムカつくことあって〜
やうやうしろくなりゆく
旅は千代の過客
隣の客はよく欠く空
吐く吸う繰り返す音が鳴る
胎が仰け反りまた押し出すぐうの音
あるいはちょき、ぱー
もう何も大事にするもんか
だって全部だ、これからが全部
これまでも、今も

********

希望について。

色々いいお話がありましたね。
信じていますよ。
目は潰れてても目を見て。

いつしか、
いつしか。

**********

細かく震えるだけなら自由だ
まだ冷たい風に先走って花は揺れる
五つの花弁がばらけては落ちて
地面、地面以外
瞬間で捉えるならどこへでもいけそう
なのに重力がきついね
ひと雨きそうだ
けれども今なら
まだやりようはあるよ
泣く、泣く、みんな泣くけど
ずっと気持ちいいの知ってる
笑う、って才能のこと
唇も散り落ちる


自由詩 祝辞 Copyright れつら 2009-03-24 00:08:15
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