送り火ピアニシモ
AB(なかほど)

 


まだまだ不器用な
あいちゃんの手では
線香花火の玉が
もう少し
と思うところで

 ふっ

と下に落ちる



もう少しで
ひとつの場面が見える

もう少しで
次の場面が見える

もう少しで
君の声
君のえくぼ
君の心

もう少しで


あ、

  ふっ





七尾湾に大キリコが投げ入れられ
歓声が沸きおこり
海上花火が鏡のような内浦に映える

あいちゃんは
漁港へと走り出す


地べたに残された線香花火があと3本







fromAB


自由詩 送り火ピアニシモ Copyright AB(なかほど) 2004-08-15 13:53:14
notebook Home 戻る  過去 未来
この文書は以下の文書グループに登録されています。
fromAB