Übers Licht
杠いうれ

滴り落ちる鍾乳石の響きのように 光は触れ、惑わす
耳を澄まし気付くまえに 耳を澄ますよう気付かせる
それがやって来たとき 
わたしたちのつたないじゃれあいを
ペテュニアやら杏、ソシュールやらで泥塗れたことを
棺の釘を抜くように
垣間見るのだ

例えば君は わたしを誰よりも解体し、標本にした
それはわたしではなかったけれど
整列された標本は美しかった
「恋のようなものを感じているのかもしれない」
「――笑い飛ばしなさい!」

やはり 勝手に咲いて、勝手に散る、のだった
君は帝王切開で産まれた


君の町を文字で知っている
君の名前を文字で知っている
君の生身を光で知っている

地下道で蹴った空き缶の尖った音
水切りの小石のように
他所で済ませた心拍数のように
暗い蛍光灯
赤いアルミ缶


共時態がどうとか 君はむつかしいことばかり


君の想うフランスと わたしの見たフランスが違うように
戸籍が示す通り わたしは君ではなかった


エレーンのことを覚えている?
逆側の海で未だに
わたしは地平に投げ掛けているのよ、




自由詩 Übers Licht Copyright 杠いうれ 2008-12-09 18:14:57
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