昼色
湾鶴


彼女は
やわらかい陽の中に溶けこみ
しだいにその存在が
透けてゆく

凪ぎの水面ような
ひっそりとした図書室からは
ときより遠慮がちに
ページをめくる音だけが聴こえた
それは秒針のような寄る辺で
不規則なようで一番たしかなもの

静かに本をめくる彼女にあわせて
僕もページをめくり
遠い世界へ思いを馳せる
同じ場所でも違う世界へ
違う世界でも同じ場所で

パラリと本をめくる指と
午後のチャイムは
昼色に染まる


自由詩 昼色 Copyright 湾鶴 2008-12-05 13:49:27
notebook Home 戻る  過去 未来