サルベージ
千波 一也



巻き戻された、気がして

夜を
何度も聞き返す


この手が、
あるいはその胸が
用いようとする意味は
おそらく誰かの
船底だろう

唯一
月がおびえる頂



 鎖につながれた森が
 空へと凪いでゆく

 その先端に
 鍵がある


 研いではいけない
 声が、する



聞き耳を立てながら
ひとり芝居は、
終われない

束縛するものすべてを
放り投げても

ひとつにはなりえない



孤独という名の豊穣を
千年の火で出迎えて

そっと、
盗み取る

禁忌のしずく



素顔に濡れた
指さきで、いま











自由詩 サルベージ Copyright 千波 一也 2008-12-02 23:14:09
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【月齢の環】