透明なきもちになりたくて
見あげた空は青だった

よく晴れた
雲ひとつない青だった


春の匂いはまだ冷たくて
透明な
青の真下は
なお冷たくて

見つからない意味の底 ....
三つ数えたら、
きみを守るなにかになりたい、と
ひたすらに信じていた
ぼくだった
きみのとなりにいることに
多くの疑問を持たぬまま


三つ数えたら、
きみだけのぼくになろう ....
「シアワセ」という音で
ひとの死を表す国があったとしたら
「シアワセニナリナサイ」という
祈りの言葉が怖くなる


たとえばお金を指さして
「シアワセ」と呼ぶ国があったなら
「 ....
忘れ去られることは
滅び去ることと同義ではなく

ときに月夜の雨のなか
朱色の花の
面影が咲く



雲を織りなす風たちは
水の巨像を築き上げ

やわらかな片目の
や ....
空へと放った愛の言葉は
今ごろどこにいるだろう

雨の向こう側から
しずくのひとつを
ふと、思う



空から盗んだあの日の苦みが
髪と夢から香るとき
海はきまって
凪 ....
夢の続きを見るために
ぬぐいきれない
やさしさに染む
 夜に泣き
 夜を咲かせて
 また夢になり



夢の続きを見るために
つかい慣れない
火に冷める
 いつからか
 ....
この世にひょい、と
生まれたわたしを
どう思おうと
わたしの自由

どう思われても
わたしは自由

つまりは
すべて、予定のとおり

未定という名が
いついつまでも
 ....
雨のなか、

竜が
咲いていた



それは

瞳が
見たのだったか、

耳が
聴いたの
だったか、


あまり上手に
思い出せないけれど、


 あ ....
雪解けの水がつるり、と窓にいて
陽射しはひらり
春、うたまつり



じわ、
じわり
布団を抜け出る子のように
ひとつ、ふたつ、と三月の砂利


太陽に追われて ....
空へと続く
いくつかの道すじがあり、
それらはやがて
空を流れて
空になる


 それゆえ
 空への道すじを
 川と呼んでもよかろうか


しずくはどれも
はじめは少 ....
うすべにの桜を頬にほころばせ
ふゆを咲くのは
あどけない、春




さむい夜
機関車さながら息をして
笑っていたね
星くずの頃


転んだらふわふわでした新雪は
 ....
赤い夕日を浴びたのに
かげだけ黒い、
そのふしぎ。


草木も花も野も山も
おなじくみどりと
呼ばれる、
ふしぎ。



 波の青さにあらわれて
 透きとおってゆく、 ....
ひよこを食べる猫がいて
あるときひよこが
噛みついた

それからひよこは
猫を食べたり
ときどき親を
食べたりも
する



ひよこをだます猫がいて
おかげでひよこ ....
氷の川を
停められるのは
時の流れにせせらぐ命


 つめたさを
 うたう刹那が底にあり、

 静けさを
 砕く車輪が
 渡りゆくから、

 氷の川は
 停まらない
 ....
しずかな雪のあいだから
わずかに土が
見えるとき

わたしは灰の
そらを見あげる


 まだそこに
 凍えるものはありますか、


小さな呼吸は
ぽつり、と白く
あ ....
今年
いちばんの正直者が
各地で猛威を振るっています



不満なことには覆いをせずに
可笑しいことなら囲いをはずし
感じたことを
感じたままに

まもなく
無上のわか ....
ありのままに
よごれていけたら、いいね

きっと、
すべてを
にくめぬように
そまればいい、
ただ

たとえ
だれかが
よごれ、とよんでも
それはかならず
うつくしい ....
冬の辞書には
牙が満ちている

燃えようとして
生きようと、
して

裏も表もなく
ただ、それゆえに
いたわりがたい
鋭さが
ある

つめたさに似た
熱量、として
 ....
そっと胸の内にあるものは
わたしの外だ、と
わたしはおもう

はるか
空の高さを
見上げることと
なんら変わりない



わたしはここだ、と言葉を放れば
わたしの手立て ....
およいでいる、ということに
気がついてしまうと
溺れはじめる


 わたしが
 わたしを忘れることも
 たいせつな息継ぎ

 うまれもった、すべ



音色、という文 ....
毛布になついた匂いをかぐと
やさしくおもえる十二月

ふゆという名のまぼろしが
ふたりのあいだに
許される



 つめたい風のひとひらは
 ぬくもりひらく
 手のための ....
欠点はね、
やさしく撫でられたら
十分なのです

無理をして語らないでください

いろいろな角度から
見つめないでください

寄りそうだけで
よいのです


見渡せば ....
吐息が
しろく曇るのを見ると
少し、安心できる

わたしの日々は
ほぼ偽りかも知れないけれど
熱だけは、進もうとする熱だけは
たしかに思えて
安心できる



いつだっ ....
とうの昔に
ほろびていたのかも知れない

ほろびという言葉は



まっすぐに立ち上がること

それを叶えた
わずかなものたちのいどころを
陸とよぶ

だから
陸 ....
わたしの母が病に倒れたとき、

もう、
何年も昔のことだけど
わたしの母が病に倒れたとき、

わたしの
不安や曇りや
行き場のない怒りを
おまえはどんな思いで聞いていただろう ....
巻き戻された、気がして

夜を
何度も聞き返す


この手が、
あるいはその胸が
用いようとする意味は
おそらく誰かの
船底だろう

唯一
月がおびえる頂


 ....
わたしに幸福を、と
願えることの その幸福を
わたしは いくつも
置いてきた


 たぶん、わたしたち
 水槽のなかに
 生きている

 そこは程よく窮屈だから、
 ぬく ....
冬の
凍った路面を
手を取り合って
老夫婦が歩いてゆく

どちらが
どちらを
かばうでもなく

どちらがどちらに
もたれるでもない


ごく自然に
互いが互いを支え合い ....
いつかわたしも
潮風になる

いいえ、
それよりもっと目立たない
砂の声かもしれません

潮風が
きびしいながらも心地よいのは
おそらくそんな
匂いのせい



わ ....
くれないを燃やしては織る彼岸花
散りゆくあきの路にざわめく



朝を着る嘘としたしむ桔梗の日むらさきいろの欠片をかおる


銀杏というなまえに咲いた羽たちを追いかけている日記 ....
千波 一也(758)
タイトル カテゴリ Point 日付
五月の教室自由詩2*09/7/16 15:37
三つ数えたら、[group]自由詩4*09/7/15 18:30
シアワセの国自由詩3*09/6/26 11:18
王族[group]自由詩3*09/6/25 10:17
ぼくたちの空自由詩3*09/6/18 18:30
夢の続きを見るために自由詩4*09/6/17 18:44
不時着自由詩4*09/6/14 1:53
伏竜自由詩3*09/5/31 12:41
◆春うたまつり[group]短歌2*09/5/22 12:16
自由詩3*09/5/20 12:20
◆ふゆを咲く[group]短歌6*09/3/2 23:09
ふしぎ自由詩11*09/2/20 9:30
ひよこ自由詩8*09/2/18 13:10
氷の川自由詩5*09/2/16 12:23
二月列車自由詩7*09/2/13 13:28
うそつき予報自由詩6*09/2/9 12:21
ありのままに自由詩21*09/2/6 14:04
冬の辞書自由詩8*08/12/25 14:20
信じることが、太陽自由詩5*08/12/18 23:10
水の器[group]自由詩12+*08/12/11 21:50
予告篇[group]自由詩6*08/12/10 0:12
同心円自由詩8+*08/12/8 23:34
雪が混じる自由詩20*08/12/7 23:15
きれいなうろこ自由詩5*08/12/3 23:43
■千羽鶴[group]散文(批評 ...3*08/12/3 0:09
サルベージ[group]自由詩3*08/12/2 23:14
わたしに幸福を自由詩6*08/12/1 11:31
老夫婦[group]自由詩3*08/11/30 22:51
潮風自由詩7*08/11/24 20:18
◆あきの路[group]短歌3*08/11/21 11:51

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