深い森
さくら

せせらぎは 
言葉を濁すことを知らない

そこはかとない波のゆらめきに
疲れた手を浸し 剥がれてしまいそうな
うろこか言葉かわからないようなものを
さらさら、と流し
そして しぐさを落とす

眠らない夜の声も
数えない星の色も

まばたきよりも多くて、
わたしには見えない空を
あなたはきれいだと語るから

せせらぎの歌が聞こえるときは
静かに そっと
身を添えておこうと思う

深い森では二人
よく似合っている


たとえば そう

流れに寄り添うことを忘れ
流れてしまう刹那に溺れても

深い森では 日向の匂いをおびた風が
さらさら、と
水のようで私のような形をした
空を運ぶから

あなたは そっと
口づけをすればいい

静かに、そっと


自由詩 深い森 Copyright  さくら 2008-11-09 10:49:43
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