不通
本木はじめ

煙草を灰にするように
死に体の鴉たちが一斉に飛び立ったので
空が夜みたい
狭い空ばかり見ていたから
わからなくなるのです
こんなとき
天井がもうきついそうなので
僕は唾を飲み込んで
君のくれた花瓶を抱きしめる
庭の草むらに埋もれている
井戸は涸れてしまっているので
どっちにしても暗いのです
君はずっとそんな闇の中で
皿を割り続けているね
白くなってからも毎晩
音さえ粉々になってるよ
耳が散らかってしまうから
もう僕は鴉の死骸を求める者になるだろう
上空から黒い鳴き声が
低音で降ってくる
嬉々として空を見上げればそう
夏の曇り空
ぼくら一緒に住んでいたね
この羽根だらけの廃屋に
今さら
黒電話が鳴る



自由詩 不通 Copyright 本木はじめ 2004-07-28 23:12:24
notebook Home 戻る  過去 未来