夜のはじまり・多摩川土手ごしに望む
たちばなまこと

もうベビーじゃないこびとをのせて
ベビーカーを押している
愛しい生活にまみれた周辺を
いっぱいに抱えながら

秋は日に日に落ちてきて
車輪がとらえる枯れ葉の音が
肌の乾きを知らせてくれる

緑道を抜けて多摩川の土手
緑が沈んでゆく
夜のみなぞこを思う
丘陵を東から西へなぞる
空飛ぶ女の子がステッキでネイビーを
灯したように

丘の上の公園
かわせみが住む崖
テールランプの鎌倉街道 関戸橋
トヨタのマーク
ヘリポートをかぶる高層マンション
せいせきSC
PACIFIC CONSULTANTS
白く浮かぶ四谷橋 野猿街道
アップダウンの激しい街
こびとちゃんと私の友だちが住む街
川は山からやってくる
まだ 知らない友だちが住む土地

パパと拡げられなかった
いくつもの、いくつもの。
どこまで拡げられるだろう
拡げることをしない人もいる
それは知っている

草木がスローダウンをはじめる秋の
桜並木もやわらかに落ちて
こびとにはおらせたカーディガンの
たおやかさにからだが 眠るように


自由詩 夜のはじまり・多摩川土手ごしに望む Copyright たちばなまこと 2008-09-21 09:04:23
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