無力にして鋭利 それは重い鈍痛として
紫音

世界でもっとも無力でもっとも鋭利な武器
言葉をもって 詩をもって
何をする

綺麗事を書き連ねるつもりもなく
シャンデリアは宮殿の奥へと封印し
救済したいとか共感してもらいたいとか
大仰な嘘大げさ紛らわしい
ことをしたいわけでもない
クライストにはなりたくもない

散文的な素養があるわけでもなく
先人の学があるわけでもなく

 (それで何を書く)


対峙した世界の向こう側に
抉りこじ開ける力を持って

詩を書いてて楽しい?
と聞かれてどう答える

そもそも答える必要があるのか
答えなど必要なのか

あらゆるものを数字に還元し
分解していく世界で

これでさえ
こうしてデジタルに溶解していくというのに
むしろ
アナログにすることさえも困難であ
るのに

理知的な遊びをしたいわけじゃない
この武器は遊びじゃない
というほどの気概があるのか
問題は別にある

(問題?)


革命も闘争も化石と化し
歌詞が仮死を迎え
それでもなお放出される武器は
果たして何をもたらす

どの言葉が当たるのか
ロシアンルーレットでもしているつもりか
くだらないつまらない
ごっこ遊びじゃない
そんなことをしたいわけじゃない

空を突き刺す電柱を這う
混線した電線のように
突き詰めることが
突き放すことが
突き落とすことが
突きつけることが


世界と対峙している
それは幼稚にして無力な武器
だからこそ
可能性の胎児

閉ざされた口を
四肢に変えて
放たれる
化膿性の


自由詩 無力にして鋭利 それは重い鈍痛として Copyright 紫音 2008-09-03 00:48:52
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