遂逸、確固は雷
木屋 亞万

病気ってさ
痛くてさ辛くてさ
周りに迷惑かけてさ
色んなもん失ってさ
未来の終わりが見えてさ
過去が虚しくてさ
死にたくない
って思ってさ

元気な頃はさ
死ぬなら泡のようにさ
苦しまずにあっさりとさ
綺麗に死にたいってさ
言ってたんだけどさ
せっかく色々頑張ってさ
生きてきたのにさ
終わりぐらいちゃんとさ
死ぬぞって思って死にたい
って今更思ってさ

病気ってさ
背骨が溶けたりさ
記憶がほつれたりさ
怒りっぽくなったりさ
致死量の辛酸を嘗めながらさ
自分の人生の意味とかさ
死んでったやつのこととかさ
考えたりするわけさ
まだ死にたかないな
って思いながらさ

またお前に迷惑かけてさ
お前の方が倒れそうでさ
でも全然治んなくてさ
もう先もないだろうしさ
直接は言えないからさ
録音しとくんだけどさ
病気になってさ
良かったんじゃないか
って思ってさ

開き直りじゃなくてさ
自分が死ぬのがわかってさ
周りも覚悟とかさ
手続きとかさ
済ませれた訳だしさ
お前にもさ
こうやって遺言じゃないけどさ
メッセージ残してさ
突然いなくならずに済んでさ
良かった
って思ってさ

お前より先にさ
死ねるのもさ
案外しあわせかもってさ
思おうとするんだけどさ
何か悔しくてさ
ごめんって言うとさ
また怒るしさ
ありがとうって言っても怒るからさ
良かった
ってだけ言うわ

俺、生まれて良かった
病気になって良かった
お前に出会えて良かった
ってさ

遂逸、確固は雷


自由詩 遂逸、確固は雷 Copyright 木屋 亞万 2008-08-30 01:46:01
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