透きとおったラヴレターを携えて
りゅうのあくび

携帯電話の液晶ディスプレイのこと
例えば
それが昨日と云う日
であったとしても
恋心を想って
もう通り過ぎたはずの
初恋の儚いだけの記憶が
ほんの微かに
胸の中へと
染み込んでいるみたいに
ふと傍らにいる

ちょうどそばに
浮かんでいた
過ぎ逝く秋の空と
君の微笑む一瞬とが
凛々しくきゅっと
廻りあうような表情は
本当に素敵だったよ

眼鏡の奥の方にある
褐色をした瞳が
やや潤んだ気がして
静かに雨が
降りしきる遠い夜明けに
恋の予感は
そっと始まって

しっとりして
きらめく朝露のあいだを
濡れる空に揺れながら
金木犀の小さな花が咲くように
まるで目覚めたばかりの
君のまなざしには
ほのかな笑顔を
まだ残しているだろうか

吐息でぬくもった
涼しい空を握る
僕の手のひらには
少し未来の君へと宛てた
とても熱い想いを
包み込んでいた
恋のプラスチックできている
切なくて透明なラヴレター*1
折れ曲がるようにして
ぎゅっと握り締められていた




好きだよ


*1 携帯電話の液晶ディスプレイのこと



自由詩 透きとおったラヴレターを携えて Copyright りゅうのあくび 2008-08-25 21:22:20
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