胡瓜と木瓜
木屋 亞万

胡瓜がある
美しい弧
青々とした肌
適度な間隔を開け
並ぶ突起

私の若い頃には
胡瓜は地を這い
地と接する腹は白かった
緑と白、間に黄色
あの化粧っ気のない胡瓜
最近見なくなった
作りもののように
真っ直ぐで緑一色

町ゆく女も男もみな
似たような髪型をして
差のない服をきている
減ったなあ
作りものでない人間も
私はもう漬け物みたいに
糠臭くなっちまったが

細くて白い女とか
ごつくて黒い男とか
種類は増えたのに
みんな抜け殻みたいで
自分の臍の色も知らない

不格好な自分を
どこに隠しているのやら
変に気取ったものばかり
野菜も肉も人も
もっと乱れなさい

胡瓜を手に取り
もっと曲がるよう
力を加えたら
折れてしまった
この根性なし

個性は種類じゃない
のびのび成長すること
なあに
好き放題やっても
頭がぶつかるように
この世界はできている

売り場の責任者が
私に胡瓜の買い取りを
要求して去っていく
可哀相な胡瓜をすべて
会計に運ぼうとしたら
責任者が帰ってくる

私はまだ木瓜ちゃいない
あんた
木瓜の意味知ってるか
華やかに裂けた林檎
ってんだから
私はまだ裂けるほど
熟しちゃいない


自由詩 胡瓜と木瓜 Copyright 木屋 亞万 2008-08-24 00:21:50
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