水のための夜
木屋 亞万

膝に水をためた
母は手術で水を
抜いてもらった

肺に水をためた
父も手術で水を
抜いてもらった

誰にでも
水がたまる
時がある

人は誰もが
抜いてしまいたい
水を持っている

人体の大半が
水で出来ていて
零れ出す夜もあれば
乾ききった朝もある

水は流れるものだから
身体にも流れがある
上から下へ流れたり
環状の管を流れたり
忙しなく動き続ける

そんな水もよどんだり
たまったりする事がある
池のように湖のように

だから
湖から川の流れ出すように
そこに流れを作ってあげる
一人きりの静かな夜に
目を閉じて湖を開く

誰にでも
自分の水を
手入れする
夜がある

たまった水を
腐らせないために
そっと流し出す夜がある

水のための夜があるのだ


自由詩 水のための夜 Copyright 木屋 亞万 2008-08-05 00:29:16
notebook Home 戻る  過去 未来