湿標
木立 悟





日陰の風が吹き
白い鳥が集まる
曇の淵
まぶたの上


雨は上がり
陽は遠のき
もうひとつの熱の雨も
水たまりを去ってゆく


上からの光が届かない穴に
花がひとつ咲いていて
横からの光に照らされ
双つのようにそよいでいる


雨と晴れは
指ひとつ分だけ離れて飛ぶ
次の雨 次の晴れ
窓にあふれる


鏡 傘 花
音になり
音の足になり
午後をわたる


街と交わり 雨を孕み
原を迷う母の群れ
ひとつの熱が左手に残り
糸のように踊りつづける














自由詩 湿標 Copyright 木立 悟 2008-07-24 20:04:59
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