忘れられた
亜樹

ご存知ですか。
ほら、あすこの角のあばら家のご主人
去年の夏から、戻られないので
可哀想に
庭木は日に日に
しおれております。

だというのに
縁側の脇の
紫陽花だけが
目がさめるほどに
美しいので
一本手折って帰ろうと
一歩足を踏み入れましたら
人目に怯えて
あっという間に
枯れてしまいました。

残念なことに
忍び忍んだ美しさは
人の見えないところに
あるようなのです。


自由詩 忘れられた Copyright 亜樹 2008-07-08 21:20:49
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