八つに裂かれてしまいました。
始まりはたぶん生まれた日に。
道徳だとか協調だとか
個性だとか信念だとか
我儘だとか論理だとか
金銭だとか健全だとか
そんな風な刃物が
繰り返し繰り返し
 ....
私は切り裂きたいのだ。
あなたの心を。
ずたずたに切り裂いてしまいたいのだ。

真っ白な紙を
折るのでなく、
墨で塗りつぶすのでなく、
ぬるま湯の中でふやかすのでなく、

真新しい、 ....
柿の実が落ちる落ちる冬枯れの山に残った熟れすぎた恋

待ちぼうけ木守りの柚子二つ三つ密やかな灯り雪を待ちける

裏地縫ううらみつらみの針の先咲かせ咲かせ真っ赤な椿

道端の水溜りの水色あざ ....
――波の間にはねた魚のその行方
――あくる日に落ちた椿のその最後

 どなたかご存知ありませんかと
 大きな声で喚きながら老女が通る。
 つららの下がった軒下で
 猫が寝ている。
 大層 ....
お元気ですか。
庭で椿の花が咲きました。
大きく口を開いた虎の舌。
あんまし覗き込んでいたので
ぼとりと花が落ちたのにも気がつかない有様です。

お元気ですか。
昨日の雪は解けています。 ....
幾分か前に
脂ぎった雨が降りまして
それからはにょきにょきと
灰色の筍が伸びるようになりました。

ニョキリニョキリニョキ
ニョキリニョキリニョキ

筍どもは馬鹿なので
見境もなく密 ....
ひどく疲れているときに舐める塩は甘い。



{引用=つまり愛とはそういうものです}
歳をとる、というものの
実際、歳は取れるものではなく
負うものである。

ずしり、ずしりと
降ってくる重みが
年寄りの腰を曲げるのだ。

{引用=
 ああ、今年もまたこの日が来ました ....
冬の立つ前の最後の雨です。
サルビアの花が燃えるように赤くなる。

 (巷に雨の降るように)

  さびしいさびしい晩秋です。
  山ははらはら葉を落とす。

   (巷に雨の降るよう ....
{引用=
世界中の子が
いっせいに
赤い風船
飛ばしたような
お空です。}
世界中の子が
泣くでしょう。
こんな夕日の
赤い日は。


{引用=なくしたものを
思い出し
空 ....
 夏というのは、その極彩色の明るさとは裏腹に、死の季節だ。
 そのまぶしい日の光と対照的に、くっきりと落ちる影のように、その陰惨な気配は、始終里を覆っている。
 年寄りの多い田舎では、夏になると葬 ....
 仕事柄、深夜に帰ることが多くなる。
 駅から家まで帰る道のりの、唯一曲がらなければならない角に、その家はあった。
 日付が変わろうとするような時間帯である。
 だというのに、その家の家主であろ ....
そこいら中からブラームスの音がするよ
陽炎がのたうように
そこいら中からブラームスの音がするよ
深淵を歩くように


枯れ果てた向日葵の間を
風が吹きぬけ
小さな竹林の
静寂が流され ....
おそらは一つしきゃないもので
しよがないから
うみだけ恋うた

うみはあんまりひろいので
しよがないから
そらだけ乞うた

ひとりじゃあんまりかなしいし
ひろけりゃよけいにさびしいし ....
ごらん
あすこの田のね
水面が
水銀のように
ぬたっている

 あすこから
 穂のような爪が伸び
 根のような皺が這い
 虫のような舌が湧く

ほら
あすこの石垣
その隙間が ....
遠く遥かな
おぼろ月
春の夜半なら
届くのか


一人で歩く
かえり道
ついてくるのは
おまえだけ
夜とおんなじ色の猫


うすぼんやりと
おぼろ月
猫とおんなじ
色の ....
甘いアルコォルを摂取しすぎて
おなかを壊しました。
毒とは甘いものかしら、と思います。

夕べお隣で飲んでいた
おにいさんの顔が思い出せません。
モザイクかかったような人
私のような
 ....
山の一番大きな木に
ホウセンカズラの灯が燈ったら
お祭の合図です。
各々この夏手に入れた
一等綺麗な思い出を持って
おいで下さい。
カササギのアオ爺が
その質に応じて石をくれます。

 ....
あさ
台所に行くと
涼やかな甘い匂いがする
桃の季節だ
ダンボールの中で
熟した実が醗酵している。
触ると
産毛が密かに暖かい

桃を手にした私に
おかあさんが声をかける。
―― ....
夏の影の一番濃い部分が
凝り固まったくらまとんぼを
幼子が追う
たやすくつまめる
その黒い羽


ねえあなた
一度手にして
満足したなら
はやいとこ
はなしておやりなさいな
で ....
エレキテルな星が
空につくる星座は
直線ばかりで
見分けがつかない
発見者は
誇らしげに名前を作る

月の上には
ひるがえる旗と
消えかかった足跡
そのまわりを
ぐるぐるとまわる ....
「なくさないでね」と
母親に渡された乗車券
握り締める
チクチクと
手のひらに刺さる角っこ


手の中の
小さな痛み
それがあの日の
わたしのすべて


チクチクと
手のひ ....
満月の夜は眠れないの
ううん眩しいからとかではなくて
満月の夜は眠れないの
どうしようもなく心臓が跳ねるから

 満月の夜に
 眠れないのが
 あたし一人であるのなら
 ええそれはしよ ....
遠くでしている花火の音が
心臓の音と呼応して
私に窓をのぞかせる。


高くて暗い山の向こう
一瞬の光
白い煙
あの向こうで
多分皆笑っている
ヒラヒラと
ターコイズ
目の醒めるような
青を背負って
ユラユラと
アゲハチョウ
陽炎の間を
いったりきたり


その背中で
トルコの貴婦人が泣いてる
墓を背負って
ヒラヒラ ....
あの頃我慢できていたことが
この頃はもう耐えられない


 硝子越しに向日葵を見る
 あの熱い暑い夏
 やかましくなく蝉が
 庭の木に止まる
 あの熱い暑い夏
 直下する日の光は
 ....
夕顔の花はいつ開くの
咲く前に教えて
目が潰れるよ

 あれはさ
 逃げ水の
 ような
 ものなんだよ
 涼やかな
 匂いを
 振りまいて
 鮮やかに
 偽る
 焦がれた
 ....
夏の暑さで
水が煮えて
水槽の中
飼ってた金魚が絶滅した。

 {ルビ地球=ほし}を単位で
 話さないでください
 そんな大きなもの
 僕の腕には入らない
 未来を基準に
 語らな ....
ご存知ですか。
ほら、あすこの角のあばら家のご主人
去年の夏から、戻られないので
可哀想に
庭木は日に日に
しおれております。

だというのに
縁側の脇の
紫陽花だけが
目がさめる ....
地球を覆う硝子膜が
破れると叫ぶ男がいて
そんな日はきっと
晴れだったに違いない
開いた向日葵の
まぶしいほどのイエロー
世界は今日も
腹立つほどに美しい

体の端が
セーターみた ....
亜樹(241)
タイトル カテゴリ Point 日付
自由詩0+09/1/19 20:18
真っ白な紙自由詩109/1/16 20:00
冬木立短歌0*09/1/10 21:53
幸せの末路自由詩109/1/9 22:49
虎と椿自由詩009/1/4 23:18
雨後の筍自由詩008/12/31 1:50
甘い塩自由詩108/12/26 23:01
自由詩108/12/16 22:08
ノスタルヂア自由詩208/10/23 19:42
赤い風船自由詩308/10/7 22:45
夏の弔い散文(批評 ...5+08/10/6 19:30
ミカさん散文(批評 ...308/9/27 21:25
夏の終わりに自由詩008/9/2 23:13
お空と海と自由詩208/8/31 23:36
水銀と黒檀自由詩208/8/30 1:28
朧月夜自由詩308/8/25 12:33
甘いアルコォル自由詩108/8/21 21:46
ホウセンカズラの灯自由詩208/8/7 21:41
自由詩208/8/3 23:21
夏の影自由詩3*08/8/1 22:22
クドリャフカ自由詩108/7/29 21:02
チケット自由詩408/7/27 18:04
夜道を散歩自由詩208/7/23 21:25
今日はお祭自由詩208/7/19 21:01
ターコイズ・ブルー自由詩108/7/18 22:38
遠い夏のあの影自由詩108/7/13 21:13
夕顔自由詩108/7/11 21:18
水槽の中赤い魚狭い狭いこの世界自由詩308/7/8 23:05
忘れられた自由詩108/7/8 21:20
ガリレオ自由詩208/6/25 0:54

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