だから犬歯が疼く夜はあなたに噛みつきたくなる
士狼(銀)

犬歯が疼く夜は
あなたのことを考えてしまう


黒猫が一方通行道路を逆走していて
わたしはみゃぁおぅと鳴いて忠告をした
哀しみに月はなく
瑠璃色の眼は立ち止まり
この影をきちんと認めて
にゃあ
と言って暗闇をすり抜けた
きっとあの子には交通ルールなんて関係ないんだって
鍵を閉めてから気がついた
わたし、


まっすぐな眼差しはもう少なくなってしまって
周りのおんなのこたちは
きちんとみることをしないのに
街中に溢れる嘘を見ないふりして
見えることを
隠している

わたしにはルールに縛られた猫が五匹くらいいるから
おんなのこたちの裏を知っていて
怯えた猫たちは月のない夜に
泣く


だから犬歯が疼く夜は
あなたに噛みつきたくなる
ほんとうは狂犬のわたしが五匹の猫でごまかしている日々を
笑ってくれるあなたの鎖骨に

噛みつきたくなる

噛みついて
甘噛みをして
わたしがわたしであることを
確認したくなる。
牙が埋もれていく日常はおんなのこたちと変わらなくて

わたしはきっと
猫を逃がして静かに泣くから



自由詩 だから犬歯が疼く夜はあなたに噛みつきたくなる Copyright 士狼(銀) 2008-07-07 00:07:35
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