耳掻き
小原あき

耳掻きをしたら
大きな塊が出てきて
それはティッシュペーパーに包んで捨てたけど
なんだか聞こえが良すぎて
虫の鼓動まで聞こえた時は
部屋に入って来て邪魔な虫も
どうしても殺せなくて
埃の話し声さえも聞こえてくるものだから
掃除をしようにも
きゃー、とか、わー、とか
うるさくて
とにかくうるさくて
向こうに見える木の葉っぱが
擦れて美しい音を出しているのを
少し前には聞こえてきて
それはとても心の安らぎになっていたんだけど
今は手前の音がうるさくて
とにかくうるさくて
自分の腕の産毛が擦れる音で癒されるわけもなく
夏の紫外線が荒らした肌の
かさかさという泣き声が聞こえて
なんだかわたしまで泣きたくなって
掃除もろくにできないで
埃を相手に愚痴まで言い始めて
まだ、死んでなかった虫はわたしの肩を抱いて
ダイジョウブ
なんて言うもんだから
本当は木とか空とか見たいんだよ
と怒って虫を叩き殺してしまい
どうしようもない罪悪感があったんだけど
何やってんだろって
何やってんだろって
耳掻きなんてしなければ良かったって
埃を踏みつぶさないように
体育座りをしながら
ただ、眠くなって
全部、夢になるのを待っていた



自由詩 耳掻き Copyright 小原あき 2008-06-20 14:46:10
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