ふくろうと月光
小原あき

玄関の靴箱の上に
ふくろうを飼っている
餌もいらない
水もいらない
糞もしない
木彫りのふくろう
畑の胡瓜よりも世話がかからない
木彫りのふくろう
だけど、夜になると
目が光る

わたしは暗闇が苦手だ
暗闇に入ると何も見えなくなる
怖くはないが
不便だ

階段を下りると玄関がある
門灯を消して
眠る準備をすると
消したはずの光が
ぽつり、と灯る

火の元が気になって
二階の寝室から階段で一階へ下りると
ぽつり、と灯る
彼は鳴かない
暗闇に光を見つけられないわたしに
暗闇のわずかな光を集めて
彼は玄関を案内する

ついでと思い
玄関の鍵を確認する
彼の光は結構明るい
わたしが見たいところだけ
照らしてくれているせいだろうか

玄関の鍵を確認して
台所の火の元を確認する
階段を上がる際
振り向いて彼を見る
わずかに呼吸しているのがわかる

ありがとう、と言うと
鳴いた気がした
それは風の音かもしれなかったけれど

電気を点けずに階段を上がる
ふくろうの光で

ベッドから見える窓を開けると
月が
ふくろうの目と同じ色をして
呼吸していた





自由詩 ふくろうと月光 Copyright 小原あき 2008-06-17 14:16:41
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