無題22(敬具)
ねろ

名も知らない鳥が空を切り裂いて飛んでいく
(あ、鳥だ)
隣に立っている人が言う
声の無い声

(本当だ、でもあの鳥が何と言うのか私は知らない)
想像空間上の問答

そうだったらロマンチックだわ
とても抽象的な空気感ね

ホームの下の錆びてレンガ色の濃くなった線路
その脇のあやふやな形をした水溜り

(あれの輪郭、女の人の裸みたい)
(まるでおどけて踊ってるわ お腹が出ていて私に似ている)

隣の人は私の目線と同じ処をじっと見ている

(あそこの水溜りはマチスみたいだな)
(人が踊っている絵のやつ)

(踊っている人って性欲に狂っているように見えるな)

(何でかな)

(よくわからない)

飽和したコンクリートの匂いを持て余した
一人である私は隣のもう一人に
それを打ち切る事を勧めだして

具象的な関係を望んだ

「小さい頃、動物のビスケットってなかった?」

うん

「あれのキリンの形のとか食べた時とか、」
「本当にキリン食べた気持ちにならなかった?」

ああ、うーん・・・・
あったかなあ・・・あったかも・・・。

(それでも多分本当はなかったんだわ)

綿菓子色の空と色付く日常的動作
それからの模範的行動にかえて


自由詩 無題22(敬具) Copyright ねろ 2008-05-21 09:40:15
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