関節
縞田みやぎ

ぼくの絵には眼がないのだ
あのぎょろりとした
目玉がついていないのだ

食卓の上に
がたり がたり と
朝食が並べられていく
寝床から起き上がったぼくは
靴を履いていない
 そのことがなんだか気恥ずかしく
 椅子の下に足先を隠した
 少しも見えなくはならないのだが
 折りたたむように して
食卓の上に
これからの食事が 並べられていく

ぼくは 今朝 起きるまでに
それはそれはたくさん
たくさん 生きてきたのだろうと思う
食卓には何日か前から 生けられた花があって
もう ずいぶん先から出立し
ここに至る に しおれ始めている
がたり がたり と
冷えた牛乳の おかわりが注がれ
 ぼくはまた気恥ずかしく
 指先を隠す

がたり がたり と
ぼくは胃袋を育て 育て
 塊となる おおきな おおきな
 ふくらむ手足をもっている
端の方まで ぼくだ
端の方まで そう ぼくだ

乳飲み子はどこへ行った
もう 描かなくてはならない
乳飲み子はどこへ行った
きっともう ぼくは たくさんに生きたのだ
乳飲み子は どこへ行った!

節々 ああ 痛む
ああ痛む 痛む

ぼくの絵には眼がないのだ
あのぎょろりとした

目玉がついていないのだ


自由詩 関節 Copyright 縞田みやぎ 2008-01-22 02:53:00
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