銀食器
千波 一也



 満月が
 飽和してゆく


そっと
するどい涼しさは
船乗りだけの
うろこです

ただ一言でかばわれて
消え入ろうにも
悔やまれて

丸みを帯びた
涙の甘さに
透かされ
ます


 あまりに綺麗な翼の夜に
 還元される本質の青

 幾億の荷が
 忘れられない岸辺を
 築く


音を立てては
なりません


 金色に
 遠ざかる脚

 その装飾となる
 崩れたままの
 無形の背


たじろぎますか
火のそばで

腕に
覚えのあるうちに
断ち切ることを
過ちますか


 地平が
 恥じらってゆく


自由の代償は
もっとも硬く美しく
ここにあります
今はまだ








自由詩 銀食器 Copyright 千波 一也 2008-01-10 15:55:42
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【月齢の環】