「ねぇねぇ、サンタさん。」完結

クリスマス・イブの夜がやってきました


あ! 
あれだけ言ったのにまだ起きてる子がいる!


そうですね 心配ですもの
サンタさんの様子を 
そっとうかがってみましょう
でも サンタさんが
あなたのおうちに行くころには 
目をつぶって
寝ていなければいけませんよ!




「ねぇねぇ、サンタさん。サンタさんは今、何をしているの?」


これから出発するところだよ

さあて そりもトナカイも準備万端だし
プレゼントも積み込んだ
よし! 行こう!


サンタさんはそりにのって
沢山のトナカイ達に引かれて
空へと飛んでゆきました




サンタさんは夜空を走るそりの上で
風を受けながら想い出にふけっていました




ああ あれはいつのことじゃったかなあ 
お前が周りのトナカイ達に馬鹿にされてなあ


 だけどあの時サンタさんは私を慰めてくれました 
 私でもお役に立てることがあるのだと
 喜んで走ったことを覚えています


あれから 随分走ってきたなあ 随分 随分 




うん 随分走ったなあ




サンタさんは夜空の星の中で
長い時間考え事をしていました
夏の時間 秋の時間 冬の時間 そして春の時間のことを
様々な時間が過ぎ去ってゆきました
そしてその長い長い道のりが
やがて終わりに近づいているのだということを知ると
涙が後ろに流れてゆきました
たくさんのトナカイ達の背が小さくなった街の灯の上を
走ってゆきます


さあ 行こう
子供達が待っているぞ


サンタさんは トナカイ達に呼びかけました
トナカイはより一層力強く走りました
鈴の音がどこまでもどこまでも響いてゆきます

メリークリスマス!

サンタさんの声が響きました



「ねぇねぇ、サンタさん。サンタさんは今何をしているの?」

ちょうど きみのうちにやってきたところさ

「ねぇねぇ、サンタさん。サンタさんは今何をしているの?」

いま きみのへやについたよ 

「ねぇねぇ、サンタさん。サンタさんは今何をしているの?」

さあプレゼントをおくからね

「ねぇねぇ、サンタさん。サンタさんは今何をしているの?」

らいねんまでいい子にしているんだよ メリークリスマス! ホッホー!






あら やっぱり起きていたのですか
サンタさんには逢えましたか?
そう いい子
ちゃんと目を閉じていたのですね


ルドルフのことですか?
大丈夫 きっとサンタさんの帰りを
待っていることでしょう



けれど あなたにも いつかわかることでしょう
大切な時間のことを


大切な時間を過ごさなければならない
大切な誰かのことを
そして本当に大切な誰かを
本当に大切にしなければならないその時のことを

あなたにもきっといつかわかることでしょう

メリークリスマス!


らいねんもいい子で待っててね!



(おわり)



自由詩 「ねぇねぇ、サンタさん。」完結 Copyright  2007-12-23 17:36:03
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