落下/傘
石田 圭太

美しかった言葉
怪物の中に
悲しみをまさぐる怪物がいる
彼方までの距離を測ると
すべて等しく平行で
いつまでも
いつまでも
途方のないまま
そんな父と母は出会った





芯のない
鉛筆を
転がし続けている
止むことのない歓声
拍手
そしていくつかの衝撃音
戦争、
戦争のはじまりに
一握りの人間が
恋を
はじめている
蓋を閉じると
答えはもう彷徨いはじめて
か細い
たましいから順番に
吐き出されていくのだと知った





すべてがうそになる前の
灰色のカーテン


浸すのは太陽の赤い、
赤い、赤い、
あれは、
君なんだろうか
殴りつけた言葉たちが
青く、
丸い女に抱かれる
青い、青い、
あれは、
君なんだろうか
古い月が灯って
古い星が煌めく
届くのは、





今、世界に千の槍が降り注ぐ。それは答えよりも早く生まれてしまった者たちだ。空にあって良かった、最初から一人で死んでいくのではない。死んでいくのではなかった。

父も母も私たちの息子も恐れる槍から守る
そんな傘に
私は生まれなかった



自由詩 落下/傘 Copyright 石田 圭太 2007-11-27 00:09:44
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