アンシェー マタヤー サイ
AB(なかほど)

  


県立病院前バス停で見知らぬ女性に声をかけられて
よくよく 顔をよくよく見てみれば
あの色黒で歯のやけに白かった娘じゃないか

こんなに色白でスマートになるならば
あの日の体育館の裏で
うん と頷いていたらよかったか なんて


 アンシェー アンシェー マタヤー サイ
 アンシェー アンシェー マタヤー サイ
 サーターテンプラー屋ぬお嬢さん

 アンシェー アンシェー マタヤー サイ
 アンシェー アンシェー マタヤー サイ
 帰る場所は もう この島じゃないんだろう




コザのそば屋で偶然会った
小学校からの友達も
たまの休みで帰ってきてたさ と言う

もうすっかりナイチャーになったねえ
と言うと お前は
顔をまっ赤にして 島酒 あおった


 アンシェー アンシェー マタヤー サイ
 アンシェー アンシェー マタヤー サイ
 ナイチャーって言ったのは 悪かったさ

 アンシェー アンシェー マタヤー サイ
 アンシェー アンシェー マタヤー サイ
 またくぬ店で くぬ酒ぬ続きを




この齢にもなればしかたもないが
元気だった友の一人が急におじいに呼ばれ
ニライ・カナイに行ってしまった

馬鹿がつくほど優しくいつも笑っていた
残されたふたりの天使も父親に似るのだろう
笑顔の似合う娘に育つだろう


 アンシェー アンシェー マタヤー サイ
 アンシェー アンシェー マタヤー サイ
 清明ねえ巡いやびら

 アンシェー アンシェー マタヤー サイ
 アンシェー アンシェー マタヤー サイ
 七月ねえ降ってぃ来うよお




我侭言って大分休みをもらったけど
明後日からは仕事に戻るさ お父
明日の朝の飛行機に乗るさ お母

昔の詩人のように風を待つこともなく
いつもの生活に戻れるのだけど
僕の帰るべき場所はどこなんだろう

さあ


 アンシェー アンシェー マタヤー サイ
 アンシェー アンシェー マタヤー サイ
 我 生したる 父母

 アンシェー アンシェー マタヤー サイ
 アンシェー アンシェー マタヤー サイ
 我 生したる 縁ぬ島


 アンシェー
   マタヤー サイ
 







(読み方と個人的な解釈)
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アンシェー マタヤー サイ=それじゃあ また です
サーターテンプラー=サーターアンダギー
ナイチャー=内地人
ニライ・カナイ=島に幸をもたらす神の住む場所、理想郷
島酒(シマザキ)=泡盛
清明(シーミー)=旧暦三月の吉日、墓前に供物をし、その後、共食する(中国の風習)。
巡(ミグ)いやびら=巡りましょう
七月(シチグァツ)=旧盆(旧暦七月)
降(ウ)ってぃ来(ク)うよお
我(ワン)生(ナ)したる






自由詩 アンシェー マタヤー サイ Copyright AB(なかほど) 2004-06-12 18:34:03
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