記憶
三奈

何の変哲もない
小さな町の
小さな踏切が

いきなりニュースに登場したから
びっくりだ

あの日
小さな町の
小さな踏切で
一つの命が消えてった

あれは、確か

16の冬



「死ぬことないのに」



母親がニュースを見ながらそう呟いた

線路に飛び込んでいったその人は
私より少しだけ年上の女性


光を見失ったのか
差し伸べてくれる手がなかったのか



翌日もその翌日も
線路には拭いきれない
赤い血痕が染み付いていた


16の冬


時は流れて

悲しい事件は
時の流れにかき消された

生まれ変わり、なんて
信じていないけど

次生まれてくる時は
きちんと最後まで生きれたらいいね

少し大人になって
そんな事を思えるようになった

今年の冬




今日も私はあの線路を渡り

生きてゆく



ふっと、気づいたら

あの女性と同じ歳になっていた


自由詩 記憶 Copyright 三奈 2007-11-16 16:43:20
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