きっと、別の呼び名で
たりぽん(大理 奔)

ほんとうの事が知りたいけど
正しいかどうかはどうでもいい
つまり、とりあえずは磁北を信じて
夜どおし動かない星を探し出す
北極星、と呼ぶのは僕たちだけで
イトスギ達にはきっと別の呼び名があるのだろう

 静かにこの小屋をあとにするのは
 だれにも気取られたくないから、ではなく
 もう二度と戻らないと誓うから
 ピリオドはここには置かない

一秒ごとに私は変わっていくのに
誰にも教わったことのない
「青」を「あお」と感じる心に恐怖する
わたしの「あお」はあなたの「あお」と
似ているだろうか?
それが知りたい

同じ色を確かめ合い
同じ温度を確かめ合い
二人は
同じ世界に住んでいることを
木々の揺らめきに感じたりする
それがほんとうのことであっても
正しいかどうかはわからない
つまり、カレンダーが秒針に支配されても
日めくりの千切れない部分の厚さを一年と呼び
夜通し動かないと信じた星も
数万年後には違う場所にいるということ

星の寄せる海岸で
毎日夕日を眺める老犬は
帰らぬ主人を待つ毎日を繰り返してはいるが
それを寂しい、と呼ぶのは僕たちだけで
ジロウには永遠の幸福な時間で
その時間には
きっと別の呼び名があるのだろう




自由詩 きっと、別の呼び名で Copyright たりぽん(大理 奔) 2007-11-13 23:56:48
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