猫之面

人間を演っていると
大切なことを忘れてしまう
俺たちはもう
鎖を千切ってしまっている

もう一度
方舟が迎えにくることはない



?.

詭弁を操るマリオネットが
お前の冷えた頬に触れている
きつく閉じられた瞼と
濡れてしまった睫毛
涙の跡が痛々しい
失うことを羨んだ俺を
お前は許しはしないだろう


?.

結露した窓に
Sacrifice、と
たどたどしい筆記体で残していった


?.

お前は言う
どうして人間は創られたの、と
お前は言う
どうしてこんなに気持ち悪いの、と
お前は言う
どうして心なんて生まれてしまったの、と
お前は

千切られた鎖を繋ぐための
真鋳を探している


?.

都会の街が寒くて俯いた首筋に
大きく脈打つ動脈が隠れている
そっと噛みつこうとすると
犬みたいだね、と
やっと笑った

仲間外れの俺たちは
甘噛みを繰り返すしかないんだ


未詩・独白 Copyright 猫之面 2007-10-16 21:10:33
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