人生ノート
小原あき

灰色のコンクリートには
ない、ない
としか書かれていなくて

薄紫色の夕暮れには
さあ、さあ
としか書かれていなくて

茶色の地面には
まあ、まあ
としか書かれていなくて

青色の晴天には
ある、ある
としか書かれていなくて

緑色の草原には
そう、そう
としか書かれていなくて

真っ白の吹雪には
もう、もう
としか書かれていなくて

透明な波には
よう、よう
としか書かれていなくて

真っ黒な夜には
うん、うん
としか書かれていなくて


……


目を凝らせば
どんなものにも
メッセージなんて
うるさいほど刻まれているから

それをひとつずつ
あるいは一辺にたくさん
見つけていくことを
生きていく理由にしよう
なんて思うわけで


メッセージを書き留める
暇もなく
人生は瞬く間に重なって

ノート何億冊あっても
書ききれないけれど
結局は
一冊分くらいにしかならないような
そんな気もするわけで







自由詩 人生ノート Copyright 小原あき 2007-10-07 21:17:14
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